VRは1990年代に一度大失敗をしてからまた30年後の今、またより良いバージョンで戻ってきてから大成功を納めているVRですが、エンターテインメントなどだけでなく医療の分野などでも流行している。30年前からたくさんの問題点が改善されての再スタートとなったが、前回紹介した出産時の痛みを緩和するVR技術は女性向けとなっており、VR体験では男性より女性の方が乗り物酔いをしてしまう傾向にあるという一つの問題点が未だにあるようだ。
ミネソタ大学でVRの研究に携わっている教授はVR開始後15分で40から70%の割合で酔ってしまい、中には100%酔ってしまう使用者も少なくないとか。そしてこのVRを使用しての酔いを”cybersickness”(サイバーシックネス)と呼ぶ。また、その研究者たちは今どうしたらサイバーシックネスを防げるのか、原因、なぜ女性に多く発症するのかなどを調べている。
サイバーシックネスがなぜ女性に多いのか?
サイバーシックネスに限らず、酔いが起こるのは一般的に女性に多く見られる。主にサイバーシックネスの原因はVR使用時の環境などではなく、人間がデザインしたハードウェアとソフトウェアが原因となっており、どのハードウェアやソフトウェアが私たちに酔いを起こしているのかという原因追求をしている最中だそうだ。
それ以外の原因といえばVRを使用することにより起こるSensory conflict (感覚混乱)が起きている事だ。というのは、見ている映像と体が感じている感覚がマッチしていないことから起こる現象でバランスや空間定位がずれてしまっているということだ。特にジェットコースターなどといったタイプのVR映像で吐き気などを催す事がよくある。感覚が問題なのであれば、なぜ全員が全員サイバーシックネスを引き起こさないのだろうか?また、なぜそういった症状が女性に多く起こるのだろうか?
一つのセオリーはヘッドセットのフィットだ。最新のヘッドセットはそれぞれの頭にしっかりフィットするようにできているが、ほとんどの製品が比較的大きめに作られており平均的な男性であればフィットするが、女性には大きすぎるという事でそれも潜在的な理由であると言える。ある調査では使用者の90%の女性が”ヘッドセットがフィットしない”、27%が”レンズと目がしっかりフィットしていない”と答えた。また、比較するとたったの5%の男性がヘッドセットのフィットについて言及した。
こういった体験は船酔いとよく似ているそうだ。ある人は船酔いをし、ある人はしても耐えられて、ある人は耐えられないほどの吐き気に襲われる。こういったセオリーを否定し原因を追求すれば解決し、エンターテイメントだけでなく医療などの分野でよりたくさんの人が新しいテクノロジーで新しい体験をすることが可能になるという研究者も少なくはない。
女性用と男性用のサイズを提供することにより一つの原因が解決されると思われるが、それ以前にテクノロジーで改善できることがあればその解決に励んでいる科学者にはぜひ新たなバージョンアップしたVRヘッドセットを開発していただきたい。