幻覚剤(サイケデリックドラッグ):脳神経系に作用して幻覚をもたらす向精神薬のことである。呼称には幻覚剤の原語である中立的なハルシノジェン(Hallucinogen、英語圏で一般的な呼称で日本語圏ではそうでない)や、より肯定的に表現したサイケデリックス/サイケデリクス(Psychedelics)、神聖さを込めたエンセオジェン(Entheogen)がある。その体験はしばしばサイケデリック体験と呼ばれる。神秘的な、あるいは深遠な体験が多く、神聖さ、肯定的な気分、時空の超越、語りえない(表現不可能)といった特徴を持つことが多い。
驚く事に幻覚剤とVRの歴史は長いようで、VRの言語創作に携わった人物が楽物使用中のトリップでこのアイディアが思いついたそうだ。VR体験は幻覚剤使用時とよく似ており、どちらも受動的で私たちが通常生きている世界とはまた違った3次元の世界を体験する事が可能だそうでたくさんの科学者が精神病の治療に最適だと言っているそうだ。そしてどちらも作用が似てはいるが、ただ似ているだけで終わってしまうのだろうか?それとも将来VRで薬物体験を代用する事は可能なのだろうか?
USCで医療VRの研究に携わっている人物はVRについてこう語っている。”VRは感情を刺激するテクノロジーを持っている。なぜならシミュレーションの世界を作り出し、全部ではなく一部だけの脳を刺激する事が可能だから”。
例えばVRで崖の横を歩いていたとしたら、実際に体験者の動機が上がり手汗をかき始めるし、VRで引き起こされた感情は現実の世界で作り出される感情ととても似ているそうだ。同じ人物は”たとえ前頭葉が”これはただの映像だ、と命令したとしてもVRはヘッドセットから見えている映像が本当に起こっているかのように脳を刺激するんだ”。と語った。
そしてこの現実だけど、実際には映像の場にいないが脳内で作り出される感情的反応がPTSDや不安障害を患っている患者に効果があると言われている。例えば高所恐怖症の人は、VRを使って高いところで何かをする訓練をし克服する事が可能だったり、軍隊での経験でPTSDを患っている人はトラウマがある場所の映像をもう一度訪れる事により、回復が可能となるそうだ。
アヤワスカやLSDなどの幻覚剤使用時の脳の状態は研究の歴史が短い事から科学者でも完全にはわかっていない(一番初めに幻覚剤を使用した脳のスキャンをしたのが1990年代だそう)。とは言ってもトリップについての理論は数々あり、一つはセロトニン2A受容体(精神病の治療薬に使われる成分)や高密度の2A受容体(意識を作っている導電体)が脳内に発される事からトリップが起こると言われている。二つ目は”カクテルパーティ効果”というものが起き、脳のフィルターシステムが正常に機能しなくなり、一つの会話ではなくその他大勢の会話が耳に入ってくるそうだ。
似たような作用はあるものの、ずばりVRはサイケデリック体験を代用する事はできるのであろうか?
VRや幻覚剤についての研究を重ねている科学者は同じような作用はあるものの、VRだけで幻覚剤で得られるのと同じレベルの感情状態になるのは今の所難しいのではないかと語った。VRで視覚と聴覚のサイケデリック体験を作り上げる事は可能だが、今のままのVR技術ではそれ以外の触るなどといった五感をインプットする事が難しい為だそうだ。よくあるサイケデリック体験は身近にあるもの、自らの記憶、体験、今いる場所から起きる事が多く、それを映像にする事や、脳全体の機能を映像だけで騙すというのは難しいが、幻覚によって引き起こされる感覚の剥奪はVRが可能にしてくれるかもしれない研究が進んでいる。
幻覚剤使用時の状況など、今現在ではわからない事が多すぎるがそれが解決された時、よりヘルシーでリアルな体験がヘッドセットを装着するだけで体験する事ができるようになるのではないかと言われている。アーティストのアレックス・グレイはサイケデリック体験を元にアートを作成してる人物だが、彼のアートは大多数のサイケデリック体験を経験した事のある人々が見たものを元にしている為なんとなく雰囲気がつかめるようになっている。